森から沼へ


From the Forest to the Swamp

舞踏譜

  1. 林の中に入っていく。

    静寂、気配、茂み。 垂れ下がっている梢もあるだろう。 足元の落葉などを感知する。

    奥に行くにつれて、 闇の分量が多くなるだろう。冷気。

    ただ梢を見ている首筋に、葉が落ちて、 我に帰ることもあるだろう。

    闇の分量を把握する。

  2. の中に入っていく。

    闇の中にすっぽり入ってしまった。 無数の枝に蜘蛛の巣。 (ヴォルスの神経が土くれている。) 静かだ。周りの湿気、草の匂い。 上から落ちてくる木の葉。 暗がり。茂み。冷気を感じる。

    闇の高さを出すと同時に、横の拡がり。 埋没していくもの、森の大きさ、深さを出す。 行こうか、行くまいか? 低迷、靄、ヴォルス、カミナリ。カミナリ。 カミナリの歩行。(神経。太いところと、 細いところ。速度の違い。 軌跡を辿るのではなく、 通過していくもの。)
    闇の庭。薄い花粉をだんだん濃くしていって、 花粉に水を足したような空間。

  3. 沼の中に立った。

    湿気を含む風。土塊。ぬかるむ土。 草、水、小動物の死骸。

    ガスの匂い、入ろうか、入るまいか。

    沼を渡る。足元の水平。

    雫を払って沼から上がる。 逆の足のふくらはぎに少し土が付いている。 それを意識する。

    目の前に広がる新たな森。

    ヴォルス。仮面がもう一つの沼を渡った。

解説
森の中に分け入っていき、空間を全身で知覚する。
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