舞踏譜
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林の中に入っていく。
静寂、気配、茂み。 垂れ下がっている梢もあるだろう。 足元の落葉などを感知する。
奥に行くにつれて、 闇の分量が多くなるだろう。冷気。
ただ梢を見ている首筋に、葉が落ちて、 我に帰ることもあるだろう。
闇の分量を把握する。
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森の中に入っていく。
闇の中にすっぽり入ってしまった。 無数の枝に蜘蛛の巣。 (ヴォルスの神経が土くれている。) 静かだ。周りの湿気、草の匂い。 上から落ちてくる木の葉。 暗がり。茂み。冷気を感じる。
闇の高さを出すと同時に、横の拡がり。 埋没していくもの、森の大きさ、深さを出す。 行こうか、行くまいか? 低迷、靄、ヴォルス、カミナリ。カミナリ。 カミナリの歩行。(神経。太いところと、 細いところ。速度の違い。 軌跡を辿るのではなく、 通過していくもの。)
闇の庭。薄い花粉をだんだん濃くしていって、 花粉に水を足したような空間。 -
沼の中に立った。
湿気を含む風。土塊。ぬかるむ土。 草、水、小動物の死骸。
ガスの匂い、入ろうか、入るまいか。
沼を渡る。足元の水平。
雫を払って沼から上がる。 逆の足のふくらはぎに少し土が付いている。 それを意識する。
目の前に広がる新たな森。
ヴォルス。仮面がもう一つの沼を渡った。
解説
森の中に分け入っていき、空間を全身で知覚する。
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