舞踏譜
(触覚と神経に関わって歩いてみる。 徹底的に管理すれば 管理できないところに行くだろう。 自分の身体がいかに巨大な 神経の王国であることか。 微細なマチエールを正確に辿れるか。)
頭蓋の小枝がポキンと折れた。
鼻に耳が付いた。
顳かみからいましも鳥が
飛びたたんとしている。
足下から虫が這いあがってくる。
足の裏の虫をジャリッと潰す。
頬の痙攣、小指もピクンと跳ねる。
喉の笛。背後のスプーンの落ちる音、チャリン。
聞いたと思ったら、
頭の中に木の葉がサクサクと落ちてくる。
少し沈む身体。
歩こうとしたら、 ガチャッと胸の小部屋に鍵が掛かった。
首筋を這うナメクジ、足元から跳ぶバッタ。
空間の髭、伸びる馬の首、絡まっていく蔦、
その上に変な笑いを残して逃げていった。