神経の歩行


The Nerve Walk

舞踏譜

(触覚と神経に関わって歩いてみる。 徹底的に管理すれば 管理できないところに行くだろう。 自分の身体がいかに巨大な 神経の王国であることか。 微細なマチエールを正確に辿れるか。)

頭蓋の小枝がポキンと折れた。
鼻に耳が付いた。

顳かみからいましも鳥が 飛びたたんとしている。
足下から虫が這いあがってくる。
足の裏の虫をジャリッと潰す。
頬の痙攣、小指もピクンと跳ねる。

喉の笛。背後のスプーンの落ちる音、チャリン。
聞いたと思ったら、 頭の中に木の葉がサクサクと落ちてくる。
少し沈む身体。

歩こうとしたら、 ガチャッと胸の小部屋に鍵が掛かった。

首筋を這うナメクジ、足元から跳ぶバッタ。
空間の髭、伸びる馬の首、絡まっていく蔦、

その上に変な笑いを残して逃げていった。

解説
肉体は豊かな神経の共和国である。さまざまな神経のみによる踊り。自分が踊るのではなく、神経のみによって歩かされる。
関連舞踏譜
神経病棟の世界繊細で微妙でたよりなげで、かつ柔軟な強靱さをも秘めた王子。
変な王子
壁の世界どのようにしたら空間に壁を作ってゆけるのか。まず自分の身体を素材として壁の材質に近づけてゆく。さらに空間に身体を増幅させてゆく。そのプロセスが幾重にも重なってゆき、壁の大きさや厚みを現出させる。
土蔵